難解極まりない超複雑な機械式時計の仕組みを“優しく”解説する『超弩級 複雑腕時計図鑑』がMEN’S EX特別編集によって発売に。ここでは、その中身をピックアップしてご紹介する。
数字ディスクで時を読み取るデシマルミニッツリピーター
ダイヤル両サイドの大きな窓に現れる数字が、現在時刻を示す──機械式デジタル表示時計ツァイトヴェルクは、2009年に誕生した。分表示の10と1の位それぞれに専用ディスクが与えられ、数字は大きく見やすい。ランゲらしい優れた視認性をもつ精巧なメカニズムに2015年、ミニッツリピーターが組み込まれた。その設計は、実に画期的で独創的である。ほぼすべてのミニッツリピーターには専用の香箱が備わり、起動時にレバーを大きくスライドさせることで、時刻読み取り機構を動かすと同時にゼンマイを巻き上げる。ランゲの技術者は、リピーターの起動操作をボタン式とした。何故なら、ゼンマイを巻き上げる必要がないからだ。最大3枚の時刻表示用ディスクを瞬転させるため、ツァイトヴェルクの主ゼンマイは極めて大きいトルクをもつ。その香箱で、リピーターも駆動させているのだ。
また時刻読み取り機構は、デジタル表示式であることを生かした巧妙な設計となっている。ダイヤルで時刻を示す3枚の数字ディスクに、それぞれディスクとともに動くスネイルカムを設置。各スネイルカムの動きに順応するレバーが、各時刻単位の打鐘回数を決めるラックの位置を定める。かつてないシンプルでコンパクトな時刻読み取り機構は、デジタル表示式ならでは。さらにこのメカニズムで、打鐘の単位も独創性を得た。分の10の位のディスクとそれに設置したスネイルカムは10分毎に動くため、時打ちの第2音が15分単位ではなく、10分単位のデシマル式リピーターとなったのである。
こうした独創的なリピーター機構を安全に扱える装置も、いくつも備わる。リピーター作動中においては、数字ディスクの切り替え装置とリューズ機構とがロックされ、逆にリューズを操作時にはボタンが押せなくなるなど、様々な安全機構が盛り込まれている。繊細な複雑機構を誤操作で壊す心配なしに使える設計思想もまた、ランゲらしい。
Point 1
香箱で、リピーターも駆動させている
香箱の右側でブリッジに埋め込まれ設置されたパーツが、リピーター機構へ駆動力を伝える。専用香箱を巻き上げる必要がないため、ストロークが短いボタンは、操作しやすい。リピーターの主なメカニズムは、ムーブメントの右側にコンパクトに構築されている。
Point 2
10分単位のデシマル式リピーター
史上稀なるデジタル表示式ミニッツリピーターは、数字ディスクを利用した時刻読み取り機構によりデシマル式となった。結果、ダイヤルに表れる数字と各時打ちの音の回数とは完全に一致する。現在時間を知るための視覚と聴覚の情報がリンクするのが、心地いい。
Point 3
リピーター機構を安全に扱える装置
香箱の下には、主ゼンマイの強大なトルクを制御し、かつ3枚のディスクを瞬転させるコンスタントフォース機構が備わる。リピーター作動時にはその分ディスク用カムに、この爪がかかり動きを止める。さらに別の安全機構で、リューズも引き出せないようになる。
パロディ ブランド通販専門店